Markus Rill

The Things That CountThe Things That Count
Markus Rill

Blue Rose 2008-03-10
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本作は、Markus Rillのライヴ盤を含めて通算7作目となるアルバム。当初は前作から引き続いてGeorge Bradfuteをプロデューサーに迎えたナッシュヴィルでのセッションが予定されていたそうですが、諸事情によるBradfuteのプロデューサー降板(家庭の事情で仕事が一時的に出来なくなったとか何とか)。それを受けて、急遽プロデューサー変更を余儀なくされたといった経緯があるようです。そこで、プロデューサーとして白羽の矢が立ったのが、本作のプロデューサーであるRichard McLaurinだったようです。リズム隊は、Dave Jacques・Bryan Owingsのコンビが前作から引き続き登板。新たにMcLaurin人脈からだろうか、ギタリストとしてJoe McMahanが参加。鍵盤でJen Gundermanが参加。特に、McMahanのギターサウンドは、間違いなく本作の音を構成する上で、鍵と言って差し支えのない役割を果たしている。
収録曲中、個人的に印象深いのはM5「Sarah Stein」。1930年代にドイツからアメリカへ亡命したバレリーナの実話を題材にした、7分弱に及ぶ長尺の曲。少ない振幅で、循環する音の中を物語を綴るRillの低く粘り気のある歌声が、感情の機微を表情豊かに綴る様は、その時間経過を忘れさせてくれる。
ドイツ人である彼が、現在のような音楽志向になったのには、テキサス州オースティンへの留学経験も少なからず影響があるのかもしれません(それ以前に、興味があったから同地を留学先に選んだとも考えられるが)。実際、同地で行われていたオープンマイクが、彼のファーストステージだったというエピソードも、何処かで見た記憶があります。果たして、ドイツ人が英語で歌うという選択肢は、彼等にとってどの程度の覚悟を伴った選択なのかは、完全には測りかねます。ただし、否定の矢面に立たされようと、その壁を突破するのは、演者本人の音楽への真摯さではないかと思います。少なくとも、彼の音楽は私にとって、真摯に響く音楽である事は間違いありません。