Jenny Scheinman

buppy2008-12-22

Jenny Scheinman 『S.T.』

Norah JonesBill Frisell等の作品への参加の他、自身の名義で数枚のインスト作品を発表してきたニューヨークのヴァイオリン弾きJenny Scheinmanのヴォーカルデビュー作品。プロデュースを担当するのは、ニューヨークの飛び道具ギタリストTony Scherrが担当。大半のトラックは、ScheinmanとScherrによるデュオ形態での録音というところも、私の心をくすぐる。悲しいかな、インスト作品ばかりが取り上げられて、このヴォーカルデビュー作が、黙殺されているようなのは、非常に残念なところですけどね。
収録曲は、4曲のオリジナルと7曲のカヴァーから成る全11曲。Bob Dylanアレンジのトラディショナル「I Was Young When I Left Home」に始まり、The Plattersあたりで知られるドゥーワップクラシック「Twilight Time」や、Jimmy Reedの「Shame Shame Shame」、Tom Waitsの「Johnsburg, Illinois」等、非常にキテる選曲のカヴァーにやられますが、白眉と言えるのは、間違いなくM5「King Of Hearts」だろう。わざわざLucinda Williamsの『Happy Woman Blues』から楽曲を引っ張り出してカヴァーするセンスには、思わずクラッと来てしまいます(『Car Wheels〜』以前、しかもGurf Morlixとの邂逅以前の、最も顧みられる事のない時代のアルバムですもの)。7分強の長尺の中で、飛び出すScherrのギターソロのインパクトは絶大。爪を肉に喰い込ませながら滑走するようなと言えばいいのか、こればかりは実際耳にした人間にしか伝わらない魅力だろう。流れるような音の連鎖こそがギターソロとする人には、理解が得られないかもしれませんが…そんな事は関係ないんです。