Gurf Morlix

buppy2007-12-28

Gurf Morlix 『Diamonds To Dust』

仕事でバタバタしていて失速中ですが、ラスト2枚…この2枚に何を選ぶかは、分かる人には分かる(笑)。まあ、コレとアレですよ。コレとアレが間違いなく今年のトップ2ですから。
春先の来日公演も記憶に新しいマイギターヒーローGurf Morlixの4作目となるスタジオ作品。本作を、彼のソロキャリアでの現時点最高の作品とするのは、個人の好みを差し引けば反論は無いだろう。参加メンバーはいつもの如くRick Richardsを太鼓に起用し、ハープにRay Bonneville、バックヴォーカルにPatty Griffinという布陣(Patty Griffinの起用は、選曲にも関わったSam Bakerのアドバイスだとか)。今回は、とりわけゲスト2名の起用は、作品のイメージを膨らませる上で、非常に効果的に作用している。
新作用に用意された曲の中から、本作でオミットされた物には「Crossroads」や、Blaze Foleyについて書いた「Thinkin' About Music You Might Have Made」(広島2日目のサウンドチェックで披露していた…というか、やってもらったんですけど:笑)といった曲も含まれている。ただ、これらの楽曲のクオリティが落ちるから、選から漏れたのではない。それは、「生と死」というテーマの下にセレクトされた本作の、無駄無く統一された世界が、言葉以上に雄弁に物語る。
Troy Campbellとの共作曲であるオープニングトラック「Killin' Time In Texas」は、Troyのヴァージョンと異なり、静かなアコースティックギターで起ちあがる。Gurf自身、TroyのVer.とはフィーリングに変化を加えようとしたそうだが、その試みは成功と言えるだろう。共作者が共作者だけに、バックコーラスにPatty Griffinを起用というのは、正直どうなのとも思いますが(笑)。
続く、奥方との共作曲M2「Madalyn's Bones」では、全米で最も嫌われた女性と言われる無神論者Madalyn Murray O'Hair(「神も天使も居らず、天国も地獄も無く、死ねば土に埋められミミズに肉を喰われ朽ちていく」等の発言もある)の運命・疑惑の死を仄めかす。キーボードを使用してのマリンバの音も印象的で、曲にえもいわれぬ怪しさを付加され、妙に頭に焼きつく。
収録曲中最も早い時期に書かれたというM4「Blanket」(実際、昨年の時点でRay Wylie Hubbardのショウ等で披露している)は、本作のハイライトとも言える繊細なバラッド。Warren Zevonと、親友Chris Slemmerの死にインスパイアされたという本曲への思い入れは、Gurf自身も非常に強いものがあるのでしょう、来日時にはこの曲の前に必ずMCを入れていたのが印象に残っています。
そして、「Blanket」に並んで印象に残るのがBob Dylanの「With God On Our Side」のカヴァーだろう。数年前のBob Dylanの還暦コンサートの音源をKGSRで聴いたのが、Gurfとこの曲の出会いだったと言う。ドサクサ紛れの侵略戦争へと流れていく社会情勢への代弁として、この曲を取り上げたのだろう。シンプルな演奏の中、心臓を鷲掴みにする歌唱に、ただ聞き入る。私見ながら、Buddy Millerのカヴァー以上に、涙腺に来るのです。
M8「Windows Open, Windows Close」では、両親やBlaze Foley・Chris Slemmerら隣人達の死をカードゲームに例える。近しい人という事から、冒頭で歌われるDonnyはLucinda Williams Band時代の盟友Donald Lindleyの事を指しているようです。
さて本作、カントリーの色調の強かった前作との比較論で語られがちですが、私の中では、その比較論は意味を為さないのです。全てひっくるめてGurf Morlixの魅力だと思っている、師匠に若いのに狂っていると言われた信者ですから。しかし、そういった贔屓目を抜きにしても、非常に稀有な存在感を放つ作品であるという事実は揺がないと思います。まあ、『Cut 'N Shoot』も良いんだよとは、言いたいですが(笑)。