Gordy Quist

buppy2007-12-20

Gordy Quist 『Here Comes The Flood』

さて、唐突に始めます2007 BEST BUYです。今日からボチボチと小出しにやっていきますよ、毎度の事ながら。
新作製作の相談をSteve Wedemeyerにした時、Wedemeyerの「イースナッシュヴィルで」の一言からEast Nashville録音になったという、嘘みたいな話もあるGordy Quistの2nd。プロデュースはKevin Gordon等との仕事で見かけたJoe McMahanが担当。McMahanを筆頭に、Wedemeyer・Jim Gray・Martin Lynds・Jen Gunderman等がバックを固める。
デビュー作『Songs Play Me』では、同地の先達の流れを汲むテキサスフォークの後継者的な音楽を、ごく自然体に展開していたが、The Band Of Heathensでの活動を経て、音楽的奥行きの増感を求めてか、本作ではサウンドも、カントリーフォーク的色彩の強かった前作から、よりレンジの広いルーツロック的アプローチにシフトしているように感じる。その印象は、少数編成の曲でも変わらない。
また、27歳になった今年、彼は結婚したそうで(昨日届いたDVDでも左手の薬指に光るものが見られる)、明らかに奥さんに宛てたと思しき曲も見受けられる事が、本作のもう一つの特徴と言えるかもしれません。オープニングトラックの「Rehab Facility」は、彼の思いを、多彩なメタファーに託したラヴソング。Quist本人によるハーモニカの音色や、その曲調から、どこかSteve Earleも思わせる曲で、BOHでもこの曲を取り上げている辺り、彼自身の思い入れも強いのかもしれません。プロポーズソングと思しきM6「Green And Blue」では、アコースティックギターを中心に、ごく最小限の編成で静かに胸を打つ。本作唯一のカヴァー曲、Jack RhodesとRed HayesのペンによるM9「Satisfied Mind」を取り上げたのも(Adam Carrollとのデュエットで歌われる)、「there's one thing for certain」の言葉の中に、彼の心が代弁されていたからかもしれません。その辺りは、あくまで想像の域を超えませんが、深読みぐらいはさせて下さい(笑)。
同じ時間軸の中、一人のミュージシャンの変化の過程を楽しむ、1stがあって、Heathensがあって、このアルバムがある。そういう確かな流れの元に生まれた存在感が、心を捉えて離さない。