Pretty World

Pretty WorldPretty World
Sam Baker

Blue Limestone 2007-08-14
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最近の通勤時に垂れ流しているSam Bakerの2nd『Pretty World』。家に帰ってからも、歌詞カードと睨めっこで、適当英語でそれこそ適当に大意取りをしてみたり…ちゃんと働けよって感じですね(笑)。プロデュースは前作同様、オースティン〜ナッシュヴィル界隈を中心に活動するWalt Wilkinsと、彼の相棒のマルチプレイヤーTim Lorschが担当。前作『Mercy』に対して、最大級の賛辞を送ったGurf Morlixも念願かなって本作にバックヴォーカルとギターで参加。どうでもいい話だが、バックカバーのSam Bakerの写真を撮影したのはRomi Mayesという話。
振幅の少ない、まるで語りかけるようなSam Bakerの歌声は、技巧的ではないかもしれないが、一語一語を噛み締めるように言葉が紡がれる。賛美歌『ヤコブの梯子』のメロディ・歌詞を引用したM3「Slots」では、レノの街の地方カジノでスロットを打つ老婆の現在と過去を、『ヤコブの梯子』が結びつける。Bakerの姉妹Chris Bakerが歌うStephen Fosterの「Hard Times Come Again No More」の一節から始まるM5「Odessa」、30秒に満たないインストM9「Prelude」を挟み、Gurf MorlixのギターとSam Bakerのハーモニカが交錯するM10「Broken Fingers」、スペイン語で歌われるM11「Days」は、彼が遭ったペルーでのテロが、一つの鍵になった歌だろう。だからこそ、12月の家族の幸せな情景を切り取りながら、「美しかったあの日々」と語る「Days」での彼の言葉は、喪失感を一層強烈に浮かび上がらせる。救いの無い世界だからこそ、蜘蛛の糸にすがるような救いを求める。それを誰に歌うでもなく、Baker自身が最も自分に響く形で歌うからこそ、聴き手の琴線に触れる音楽が生まれているのかもしれません。