Nothing Gold Can Stay...

Nothing Gold Can StayNothing Gold Can Stay
The Duke & the King

Ramseur 2009-08-04
売り上げランキング : 120684
おすすめ平均

The Felice Brothersのドラマーとして活動していたSimone Feliceが、結婚を契機にバンドを離脱したらしいという話を昨年耳にした。後々色々と情報を探っていくと、どうも彼の元に生まれてくるハズだった子供を、流産で亡くしたのは、丁度この頃らしい。
その喪失感は、彼を音楽へと駆り立てたという事だろうか。彼が音楽との距離感を測ろうとする中、衝動的とは言え、再び音楽に急接近したキッカケが不幸な出来事であったのは、何とも皮肉な話ではある。しかし、とにかく、彼は友人のソングライター兼ドラマーのRobert Burkeと共にキャビンに篭り、音楽を創造したのです。
何処までも広がる穏やかな空気は、ある種の痛みを伴って、聴き手に響きます。その感触は、Neil Youngの『Tonight's The Night』にも通じるような気が(内省的でダウン状態のBrian Wilsonにも通じるような気もしますけど)。正直、僕自身は、癒し系の音楽という言葉には懐疑的です。しかし、当ても無くさ迷ったSimone Feliceの魂の決着を感じる本作。その中に満ちた、音楽による癒しの力を否定する事は出来ません。何だかね、いつ聴いてもM8「Water Spider」のあたりで、涙腺が緩くなってしまうんですよねぇ。
アルバムタイトルはRobert Frostの同名の詩から取られている。生まれてくるはずの子供に、Simoneはいつか、この詩を贈ろうとしていたのかもしれない。そう、いつか生まれてくるはずだった彼女に。
ちなみに、ユニット名のThe Duke & The Kingは、ハックルベリーフィンの冒険に登場する2人組のペテン師から取られているんだとか。