Foucault sings Prine

Shoot the Moon Right Between the Eyes/Sings the Songs of John Prine: CollectionsShoot the Moon Right Between the Eyes/Sings the Songs of John Prine: Collections
Jeffrey Foucault

Continental Record Services 2009-03-23
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「好きなSSWって誰ですか?」と問われれば、この人の名前をパッと口をついて出てきそうな気がするのが、Jeffrey Foucaultです。
ウィスコンシンのSSW、Jeffrey Foucaultは、数年来のお気に入りミュージシャンの一人です。病んだ感じの短髪の兄ちゃんという風貌で、冴えない感じなのですが、彼が楽器を演奏し歌声を漏らした瞬間に、そんな印象は一変する。去年頃に知ったのですが、Kris Delmhorstの旦那だという事実は、師匠に教えてもらったのですが、結構驚いた覚えがあります(確かに、よくよく見てみれば、向こうのWikipediaにもそんな記述があったのですが)。
ついでなので、Foucaultについてサラッと触れておきましょう。17歳の頃、親父のギターを手に取りJohn Prineの曲を演奏し出したのが彼の音楽キャリアのスタートだそうです。その後、友人からくすねたTownes Van Zandtの『Live And Obscure』に影響を受け、ZandtはもとよりGuy Clark等のテキサスフォークへと傾倒していく事になる訳です。同時期に、Greg Brownの影響を受けた事も公言しており(彼の出身地ウィスコンシンはアイオワとは隣州だし、彼の趣向も手伝ってか、不思議ではない)。
で、そんな彼が、先月、自身の原点とも言えるJohn Prineのカヴァー曲集『Shoot The Moon Right Between The Eyes』をリリースしたのだが、これが実に素晴らしいのです(アルバムタイトルは「Clocks & Spoons」の一節から)。昨日も夜中に日本酒飲みながら、PCを弄ったり、仕事の工程案を組んだりしつつ、このアルバムを垂れ流しにしてました(笑)。
バンド演奏での曲や、サポートが入った楽曲もあります。それは、Mark ErelliやKris Delmhorstを筆頭に、David Goodrich・Peter Mulvey・Eric Heywoodといった、馴染みのメンバー達の演奏や歌声でのサポートだったりする訳です。しかし、作品の根幹を成すのは、Foucaultのアコースティックギターと苦い歌声である事は疑念を挟む余地が無い。ギターと声、2つの楽器で音楽を成立させる力と、陰気な雰囲気に滅法弱い私のドツボという訳です。私が、個人的にMark Erelliと共に、Signature Soundsの男性SSWの二枚看板として推したいのも、その辺に起因している。しかしながら、そんなファンの欲目を差し引いたとしても、その魅力が退色する訳ではないかと思いますが、如何なものでしょう。
収録曲ですが、1st・2ndの曲を中心に、割と満遍なく選曲されています(割とベタな選曲なのですが、1stから敢えて「Sam Stone」やっていないというのは、何か彼のポリシーがあるのか、ヒネクレているんだか)。Foucaultのフィルターを通して、新たな息吹を通わせた楽曲群。これは、Prineの色褪せないソングライティングの魅力を、改めて教えてくれる最高の指南書ではないでしょうか。久しぶりにJohn Prineを聴いてみよう、そんな気持ちを抱かせる本作は、カヴァー集のあるべき姿じゃないかと。