雨降りの晩の纏まらない考え

Jason Isbell and the 400 UnitJason Isbell and the 400 Unit
Jason Isbell & The 400 Unit

Lightning Rod 2009-02-17
売り上げランキング : 24315
おすすめ平均

Drive-By Truckersのメンバーとして活動していたのも、今は昔。嫁さんのShonna Tuckerとの離婚が、ソロ活動開始の一つのキッカケだったのではないかとも言われていますが、ソレは置いておきましょう(笑)。DBT時代、バンドの主導権はPatterson HoodとMike Cooleyの2人にあった訳で、ソングライターとしてのJason Isbellを、最年少のメンバーである彼がバンド内のパワーバランス崩してまで求めなかったというのも、ソロ活動に踏み切った理由の一つではないかとも思いますし、そっちの方が納得できますよね。
収録曲中で聴かれるピアノは、一部はIsbell自身が演奏しているものもあるようだが、多くはDerry DeBorjaが担当している(元々Canyonのメンバーで、再結成Son Voltに一時期参加していた人ですな)。DeBorjaに、ベースのJimbo Hart、ギターのBrown Lollarを加えたメンバーが現在のThe 400 Unit。ドラムに関しては、どうやらメンバーが定着していないらしくツアー毎にメンバーが変わっている。本作でドラムを演奏するMatt Penceに関しても正式メンバーというスタンスではないようだし。本作に共同プロデューサー兼ドラマーとして参加するMatt Penceについては、Centro-Matic・The Drams・Two Cow Garageといったバンドや、Jay Farrarのソロ初期辺りが好きなら見覚えがあるのではないかと。また、ドラムのトラックに関しては、おそらくオーバーダブされたものだろうと思われる(アディショナルを、彼の根城であるデントンのThe Echo Labで行っているという記載がある点から、間違いないでしょう)。
M3「Good」のようなアップテンポな曲も収録されているが、Isbellの本領が発揮されるのは多くのミッドテンポの楽曲だろう。極端な振幅ではなく、限られた振幅の中で緩急をつける旨さは、バンド時代を含めて、年間数百本という厳しいツアー経験を経て培われたものだろうか。
今は亡きアラバマのハープ奏者Topper Priceに捧げられた、オープニングの「Seven-Mile Island」から緩やかに、しかし緊張感を纏って、聴き手に迫る本作は、戦時下のどうしようもない恋愛事情であったり、帰還兵の苦悩であったりと、鬱屈とした社会を切り取った物語が多い。その辺りは「Dress Blues」の作者である、SSWとしてのJason Isbellの真骨頂というべきか。
鍵盤とホーンセクションが、クラシックソウルへの敬愛を滲ませるM8「No Choice In Matter」を聴かせておいて、Crazy Horse風味のヘヴィなイントロから、穏やかなメロディと重たいギターサウンドが絡み合うM9「Soldiers Get Strange」への流れは、彼の音楽の中に流れる血脈を、非常に端的に証明しているのはないでしょうか。しかし、インスト曲「Coda」以降は、やけに胸を掻き毟りたくなるような歌の連続で、どうにも参ってしまう。
彼の音楽を聴いていて、今の時代に、果たしてBruce Springsteenは大衆の代弁者として機能しているのだろうかなんて、ふと考えてしまうのです。何か妙な誤解をされて、やれThe Boss批判だとか絡まれると困るけど(笑)。ただ、The Bossと20代〜30代の人間には、埋めようのない年齢差から来る世代の壁があるのも、また事実なんじゃないかとも思うのですよ。全てを否定するつもりは無いが、新大統領就任に浮かれ切った、安穏とした社会に警鐘を鳴らすスタンスってのも、まあ必要なんじゃないかなぁと。中川家の礼二というか、ガラの悪いRon Sexsmithみたいなルックスからは、想像出来ないぐらい、結構考えてるんじゃないかな、この人(笑)。
う〜ん、イマイチ考えが纏まらないな…