Doug Burr

buppy2009-01-15

Doug Burr 『On Promenade』

一口にテキサスと言っても、街や人が変われば、そこに存在する嗜好は異なる。オースティンの某には、その人の音楽がある。デントンのDoug Burrには彼の音楽がある。という訳で、Doug Burrの2007年リリースの2ndアルバム。演者を務める側にしても、スポットライトを求める天性のエンターテイナーもいれば、ソングライティングに突き動かされて、表現の手段として自身を演者の立場に置いてしまうタイプもいるだろう。自身を分析しながら、内向的な少年だったと語るBurrは、後者のスタンスのミュージシャンなんじゃないだろうか。
プロデュースを担当するのはBurr本人に加えて、Britton Beisenherz・Todd Pertllの2人。このコンビと言えば、Steven & Sherilyn Collinsで結成されたデュオDeadmanのバックメンバーとしてギター・ベースを担当していましたね、そう言えば(何だかんだで、Deadmanの新作もリリースされているようですが、デジタル配信限定なのが、どうも)。Pertllの方は、Thrift Store Cowboysのメンバーとしても活動していましたか(他にも数個のバンドを掛け持ちしているようですが)。ドラムで参加しているRob Sanchezは、おそらくMichael Fracassoの『Pocketfull Of Rain』に参加していた人でしょう。数曲でAmanda Shiresがフィドルで参加していますが、これはTom Pertllからの繋がりかな。
線の細い優しげな印象の中に、ナーバスさや苛立ちといった情動を内包する歌声。クリスチャンミュージック的な要素も、まあ感じ取れる事は感じ取れる。しかし、曲を描く上で、土台として、記憶や経験を構成要素と考える人間ならば、慣れ親しんだ(幼少の頃に刻み込まれた?)記憶の一つを引き出しの中から引っ張り出してきただけなのかもしれない。とは言え、言葉の壁や、私はDoug Burrというミュージシャンではありませんので、彼の伝えようとしているものを曲解しているのかもしれませんけどね(笑)。しかし、3分内のコンパクトな時間の中にデリケートな感傷を詰め込んだオープニングの2曲や、ゴッホと弟テオの関係を着想に描くM5「How Can The Lark (My Dear Theo)」など、歌声とメロディの同調には、思わず溜息を漏らした、それは事実なのです。喪失という名のキャンバスに描かれる歌の引力に、引っ張られるような、そんな感覚。幼稚な表現しか出て来ない、語彙の乏しさに嫌気がさしてきますね、全く(笑)