Nels Andrews

buppy2008-12-20

Nels Andrews 『Off Track Betting』

今年も、もう残り僅かとなってきました。毎度の事ながらボチボチとやっていきますので、お付き合い下さい。
ニューメキシコを拠点に活動するSSW、Nels Andrewsの2作目となるスタジオ作品。1st『Sunday Shoes』は、本国アメリカよりも、欧州で非常に好評を得たようです。Richard Bucknerにも通じるダウンな感触、倦怠感が追走してくるようなとでも喩えればいいだろうか(その昔、ヒッチハイクで各地を放浪していたという過去が、彼の音楽の原風景を形成しているのかもしれない)。まあ、そういうのが好きですからね、向こうの人は。いや、自分も好きですけど。
Erin McKeownやAni Difranco等のプロデュースや、ベース奏者としての活動で知られるTodd Sickafooseのプロデュースとなった本作でも、彼の持ち味は変わらない。Norah JonesのところのAdam Levyや、Joan As Police WomanとこのBen Perowskyを筆頭に、Wilcoの鍵盤奏者Mikael Jorgensenの参加など、ニューヨーク界隈のミュージシャンをバックに従えている。そういった表面に敷いた現代的なテクスチャの皮一枚向こうで鳴っているのは、Andrewsの苦い歌声とアコースティックギターの響きだ。苦み走った彼の歌声に、時に寄り添うように響く、Ana Eggeの気だるいバックヴォーカルも効果的で、この二人の絡みももっと聴いてみたいところです。
オリジナルで固められた収録曲中、本作に収録された唯一のカヴァー曲は、Jon Dee Grahamの「Butterfly Wing」。斬新な解釈がある訳ではないが、彼がJDGに抱いている気持ちは歌を聴けば、聴き手に明確に伝わるのではないだろうか。少なくとも、このカヴァーを聴いた瞬間に、自分の中のNels Andrewsの株は上昇しましたから。


"Dollar And A Dream"