Rachael Harrington

buppy2008-09-17

Rachael Harrington 『City Of Refuge』

時代錯誤の歌姫といった表現は、手垢に塗れて久しい。オレゴンを拠点に活動するRachael Harringtonも、そんなオールドタイムレディ達の一人と言えるだろう。しかし、デビュー作『The Bootlegger's Daughter』以上に、その時代を逆行した空気は、そんな言葉だけで斬り捨ててしまうのは、あまりに惜しい。プロデュースはEvan Brubaker、ミックスはDavid Fergusonが自身のスタジオ(John Prineと共同運営らしい)Butcher Shoppeで行っている。参加メンバーは、ノースキャロライナのマルチ弦奏者Zak Bordenを中心に、Tim O'Brienがフィドル、Mike Grigoniがドブロ・ラップスティール、アップライトベースにJon Hamar、クラリネットにDayan Kaiといった布陣。様々な地域やジャンルの演奏者達で構成された混成バンドというイメージだが、そういったメンバー間の素養の違いが、絶妙に溶け合った音が展開される。
収録曲はオリジナルを中心に、2曲のトラッドとBobby Gentryの「Ode To Billy Joe」といったカヴァーも取り上げている。オリジナルに関しては、Harringtonの歌声、O'Brienのフィドル、Bordenのマンドリンの絡みが、無性に心を捉えて離さない、Raymond Carverの詩の問いかけに対し、彼女なりの答えを返すM5「Carver」。ギタジョー・フィドルのみのシンプルなバックの中、死の光景を淡々と描くM7「Angel Boy」(バックヴォーカルでPieta Brownが参加し、曲に絶妙な陰を差し込むんだな、これが)。そういったシンプルに刈り込んだ言葉の中に、イメージを詰め込むHarringtonのソングライティングのセンスは、かなり秀逸だと思うのだが、私だけだろうか。
90年代以降の音楽がツマラナイという人達がいる。彼らは彼女の音楽を聴いて、どういう言葉を口にするんだろう。懐古趣味?焼き直し?でも、その言葉は、きっと自分達が聴いている60〜70年代の音楽に詰まった香りを否定しているのと同義だと思うんだけど、どうなんでしょうね。