Kervilleを聴く

buppy2008-08-28

Anthony Da Costa 『Typical American Tragedy』

16歳のカーヴィル・ウィナー、2007年のこの一報がAnthony Da Costaの音楽との出会いだったと記憶している。カーヴィルのコンペと言えば、毎年6人ほどのウィナーが選出されるのだが、ここ数年だけを見ても、その面子は錚々たるもの。Colin Brooks・Gordy QuistといったThe Band Of Heathensのフロントマン達、Nels Andrews・Danny Schmidt・Jonathan Byrdといった曲者SSW達も、このコンペを通過している(SchmidtはDa Costaと共に昨年受賞)。彼等の音楽を聴いた事があるならば、このコンペの商業との因果関係の薄さは実感出来るのではないだろうか。
Nanci GriffithやJoni Mithcellを聴く母親と、Chuck Berry・Jerry Lee Lewis・Elvis Preley・The Beatles等を好んで聴く父親の間に生まれた彼は、4歳から12歳頃まで母親に連れられていった聖歌隊で歌っていたそうな。もっぱら父親のレコードコレクションの音楽を聴くのが好きな子供だった彼を、決定的に音楽へと傾倒させるキッカケとなったのは、父親のコレクションにあったBob Dylanの『Greatest Hits Vol.1』という。そこからHank WilliamsやJohnny Cashといった、父親のカントリーレコードのコレクションへと歩を進める。こういった話を聞くと、彼の周囲の環境の良さと共に、何ともませた嗜好が垣間見える。
さて、本作は同じニューヨークを拠点に活動するSSW、Fred Gillen Jr.がプロデュースを担当。大半のバックトラックは彼とDa Costa本人によるもの。客演として、Red Mollyのメンバー等で知られるAbbie Gardnerがドブロ・ラップスティール・バックヴォーカルで数曲参加している他、Steve Kirkmanがギターで1曲参加。
彼の音楽から、Whiskeytown時代から、『Heartbreaker』でソロデビューした頃のRyan Adamsや、Josh Ritterあたりの影響を見つける事は容易だろう。ただし、そういった影響以上に、彼の書く曲が純粋に良いというのも事実。とりわけ、19歳の少年兵の目線で語られるアルバムのオープニングトラック「Ain't Much Of A Soldier」は印象深い。誰も殺したくない話し合いたいと思いながら、戦争というゲームにおいて、盤上の駒に過ぎない事を悟る。そんな10代の少年兵の抱えた矛盾や、恋人への純粋な思いが綴られる。穏やかな曲調の中、挿入されるGardnerのラップスティールとバックヴォーカルも良い塩梅。その他にも、Dolly PartonとPorter Wagonerを題材にとったM3「Dolly & Porter」や、Kirkmanのギターと、Gardnerのドブロが絡むM7「I'm Your Son」など、非常に良い曲が並ぶ…10歳年下の男の子に、つい涙腺をやられてしまうんです。
最近リリースされたAbbie Gardnerとの共演盤も、結構好きなんですけど、それはまた別の機会に。


"Ain't Much Of A Soldier"