Todd Burge

buppy2008-07-05

Todd Burge 『My Lost And Found』

最近のミュージシャンの横の繋がりの希薄さを語る人がいますけど、それって本当なんでしょうか。メジャー・マイナーを問わず、ミュージシャン間の繋がりを辿らずしてローカルミュージシャンとの邂逅はないと思いますし、そもそも、繋がりが希薄ならばウチのようなブログは成立し得ないので納得が行かないんですよね。知らない、あるいは興味が無いなら、そう書けばいいだけの話でね(笑)。
ウェストヴァージニアのSSW、Todd Burgeの最新作は、そういった繋がりを意識させてくれる1枚。Tim O'Brienがプロデュースを担当。レコーディングが行われたのは、John PrineのスタジオThe Butcher Shoppe(肉屋の保管庫を改修しているのが名前の由来とか)。バック陣は、ギターに加えフィドルマンドリン・ブズーキ等の各種弦楽器を演奏するO'Brienを筆頭に、バンジョーアコーディオンハモンド等をDirk Powell、ベースにDennis Crouch、ドラムにKenny Malone、スティールにDan Dugmore…と、この周辺の音楽を聴いていれば、一度は何処かでお目にかかる人物達が集合。基点はBurgeとO'Brienの関係だろうが、そこから波及するネットワークの存在なくして、彼等の結集は無いでしょうし、正直資金的な問題もクリアされないのではないでしょうか(笑)。何も、マイナー作品への参加は70年代音楽の専売特許では無いという事を、この1枚だけとっても、充分に語っているのではないかと。
最近のミュージシャンのご多聞に漏れずBurge自身、若い頃からカントリーやブルーグラスといった音楽一辺倒だった訳ではないらしいです。多様な音楽遍歴を経て、現在のカントリー・ブルーグラス的なエッセンスを交えたスタイルへと立ち返ったという経歴があるようです。だからこそでしょうか、真摯に自身のルーツに向き合う誠実さが、音楽の随所から滲み出すように感じる。その誠実さを、達者なバック陣が支え、作品として結実する最高の支援を行う。結果として、売れる事以上に大切な、時間経過と共に退色を起こす事のない魅力は得られたのではないでしょうか。
全体的にカントリーフォーク的な色合いの曲が並ぶ中、若干毛色の異なるラストトラック「Buffalo Skinned By All The King's Men」は、トラディショナルナンバーの「Buffalo Skinners」の引用を下敷きに、イラク派兵され、地雷で両足を失った22歳の海兵の話に着想を得て描かれる。曲の最後には、マザーグースの「Humpty Dumpty」から、若干言葉を変更しつつ「And all the King’s horses and men Will never put that back together again」の件を引用。それは、グラウンドゼロ以降の、歪曲された正義と、その濁流に飲み込まれた時代の不可逆を象徴するようにも思える。

Woody Guthrie -Buffalo Skinners-