Peter Cooper

buppy2007-12-26

Peter Cooper 『Cautionary Tales』

オースティン・ボストンと同じく、特殊な音楽シーンが形成されているイースナッシュヴィルから、また一人。サウスキャロライナ出身、Todd Sniderのバンドでベースを担当する男Peter Cooperのソロデビュー作。共同プロデューサーのLloyd Greenは、Cooper自身の曲解説文中に、「Lloyd Greenが演奏しているドブロはDon Williamsの「Amanda」のレコーディングの時に使ったドブロなんだ」みたいな記述がある辺りから、Cooper自身の熱烈なラヴコールが起用の理由と考えられる(The Byrdsの『ロデオの恋人』に参加等、音楽的造詣が深ければ深いほど、一度は絡んでみたい欲求が増幅する人ですわな)。
Snider自身が壊れていると称した自身の肺から繰り出すハープの音色が印象的な、友人Todd SniderについてPeter Cooperが歌ったM5「Take Care」(この曲のフレーズがアルバムタイトルになっている)。
製作段階でのタイトルトラックだったEric Taylor作のM6「Mission Door」では、Nanci Griffith・Todd Snider・Fayssoux McLeanらとヴォーカルを分け合う。そこに絡むJen GundermanのアコーディオンとLloyd Greenのドブロ(前述のドブロ)の音色も手伝って、非常に秀逸な仕上がりを見せる。
メジャーリーガーHank Aaronを題材に取ったM8「715(For Hank Aaron)」(ソングタイトルの715は、Babe Ruthの記録を塗り替えた通算715号目のホームランの事のようで、曲中に挿入されるCooperのトーキング部は、その辺りの事を語っている)。
所謂ロック専の人が毛嫌いするカントリーフレーヴァーを漂わせるLloyd Greenのペダルスティールが前面にでた曲も複数収録されているが、本作がカントリーレコードかと問われれば否であろう。また、本作をカントリーと断ずるのならば、それは聴き手の不幸とも言える。ホンキートンクカントリーの精神性を受け継ぎながら、新たな息吹を感じさせるレコードを、埋もれさせているのだから。