Session Americana

buppy2007-12-25

Session Americana 『Beer Town: The Table Top Collection Vol.3』

ケンブリッジのバーLizard Roungeでは、夜毎テーブルを囲んでの気軽なセッションをBGMに、辛い現実と向き合う大人達がアルコールに溺れているのだろう。そんな絵を思い起こさずにはいられない、ボストン近郊のセッションマン集団Session Americanaの3作目のスタジオ作品。ドラムのBilly Beard、ハープのJim Fittingの両名は、演奏楽器が固定されいているが、残りの4名Ry Cabanaugh・Dinty Child・Sean Staples・Kimon Kirk達は、多彩な弦楽器・リードオルガン等を曲によって持ち替え演奏を行う。自分達を制約の檻に閉じ込めず、演者が最高に楽しむというスタンスの明快さは、ジャグバンドの精神性に符合する。
本作は、聴き手をしゃっちょこばらせる芸術性、社会情勢を反映した陰りとは縁遠いかもしれない。無論、そういう音楽の存在も必要だろう。しかし、猫も杓子も、実験色や革新性ばかりを追求されては、聴いていて目を細めて眉間に皺を寄せる瞬間ばかりが多くなる。世知辛い現実からの一瞬の逃避、娯楽としての音楽という考えを揺り起こす、8曲30分強で展開される至高のジュークボックスミュージック。眉間に皺を寄せる間もなく、顔の筋肉が弛緩したまま通り抜けていく時間の心地良さ。そんな音楽には、アーティストという言葉は似つかわしくない。最大級の敬意を払って、ミュージシャンと、彼らを呼びたい。