Eilen Jewell

Letters from Sinners & StrangersLetters from Sinners & Strangers
Eilen Jewell

Signature Sound 2007-07-17
売り上げランキング : 133045

昨年辺りからMark Erelli・Jeffrey Foucaultといった男性SSWの傑作がリリースされ、レーベルSignature Soundsを軸として、俄かに注目が集まる東海岸の音楽シーン。元々、ボストン近郊に存在したフォークシーンの土壌が、今確かな活況を見せる。先日、広島に行った際に、Nさんのお宅に伺って、色々と話や音源を聴かせてもらった中で(おかげでウィッシュリストが膨れ上がった:笑)、共通して今年の印象的な作品として挙がったのが27歳の女性SSW、Eilen Jewellの2ndアルバム(猛烈プッシュのかかっている東京のレコード屋ではアイリーンと表記されているが、正式にはイーリン(E-lynn)とするのが正しいそうな)。
金に物を言わせて、有名なミュージシャンを起用するでもなく、著名なプロデューサーがバックにいる訳でもない。前作『Boundary Country』と同様のメンバーで引き続きバックを固め、バンドメンバーとの共同作業の中から生まれた本作では、ハンドメイドな空気に、芳醇なまでのルーツ音楽の香りが含まれる。サウンド面では、前作から比べ、若干陽性になったとも言われるが、根底にある陰りは変わっていない。むしろ、光が射してきた事で、本来の陰の部分が一層鮮明に浮かび上がってきたような印象も受ける。
作中では、Bob DylanやEric Andersonの楽曲も取り上げている(収録曲中4曲はカヴァーで構成されている)が、彼女のオリジナル曲との境界線は感じさせない。この感覚は、Eilen Jewellを語るレビューの類で、よく引き合いに出されるGillian Welchとも似た物があるけれど、完全に自分の世界に引き込むという感じではなく、上手くバランス調整をかけているような印象とでも言いましょうか。その辺りにも、非凡なセンスを感じさせてくれる好盤である事は間違いない。