Nightbirdsは「今宵、その夜」に歌う

buppy2006-03-14

Ryan Adams 『29』

ライアン・アダムス年間3枚リリース作品の最終を飾る1枚。録音自体は3作中最初期に行われている。『Love Is Hell』から『Cold Roses』を埋めるミッシングリンク的な見方も多々あろう。しかし、SSWとしての彼の魅力が最も鮮明なヴィジョンを以って伝わる作品なのも間違いないのでは。ライアン、イーサン・ジョンズ、JP・パワーソックというシンプル極まりない編成での、隙間を活かした音世界も、その一助となっている。今まで以上に、ライアン・アダムスがピアノに重きを置いている為に、今までと毛色が変わっているからとも考えられる。腕のリハビリの加減で弦楽器を上手くいじれなかったからだと、言われれば身も蓋もないのだが。
グレイトフル・デッドのエッセンスを自分に加えて昇華するかという思索が、そのまま「Truckin'」になってしまったタイトルトラック「29」。ノイズと狂おしいピアノの旋律の交錯が印象的な「Nightbirds」。いつになくスパニッシュな響きに「The Sadness」。9曲の中で、様々な試みを実行しながら、病院のベッドからステージへ向けて動き出した男の、音楽リハビリ日記は、単純に『Cold Roses』への試作品と切り捨てるには、惜しいだけの魅力を放っていると思った次第です。