Spring wind blows again

'Til Spring'Til Spring
Clarence Bucaro

Mega Force 2009-03-03
売り上げランキング : 461913

Clarence Bucaroの4作目となる本作は、ピアノ弾きという点では当て嵌まりませんが、鍵盤が音の核になっているという点で非常に魅かれる1枚です。
Bucaroについては、初めて聴かせてもらったのは、確か広島の師匠宅だったでしょうか。その当時教えて貰ったのは、彼の1stだったように記憶しています(家に帰ってから、注文かけて聴いたのは言うまでもありません)。 活動の拠点をニューオリンズに置いていた、Anders Osborneとの交流があると言った話もその時に聞いたんだったかな…うろ覚えです。
現在、彼は、活動の拠点を現在はニューヨークに移しているようです。そんなニューヨーク移住後初の作品となったのが、この『'Til Spring』です。
音の印象ですが、所謂SSW的な感触に、クラシックソウル風味のスパイスを効かせた感じでしょうか。向こうの評では、60年代のVan Morrissonという評もありますが…う〜ん、どうなんでしょうね。Jackson Browneというのは、何か理解出来るんですが(笑)。歌声は、ソウルフルと書くと暑苦しい印象を与えるので、ナチュラルな歌い口の端々にソウルを感じるとでも言いましょうか。
Bucaroと共に、プロデューサーとして名を連ねているのはTom Schick。Schickと言えば、個人的にはRyan Adamsの『Jacksonville City Nights』と『Cardinology』の2作が、真っ先に思い浮かんでしまいます。それらの作品群にも感じた、クールでいて、どこか温もりを感じる音が結構クセになるのです。勿論、Bucaroの書いてる曲が良いというのもありますが。
ミックスは3名が担当していますが、内訳はSchickが3曲に、Thad Blakeが3曲、Ryan Freelandが4曲というところ。とりわけ、Freelandの参加はJoe Henry周辺が好きな人なら、気になるところではないでしょうか。最近のJoe Henry絡みの作品では外す事の出来ないエンジニアですしね(まあ、割と何処にでも顔を出す人なんで、イマイチ珍しさは無いのですが)。
さて、裏方連中の仕事も良いのですが、本作のサウンドの鍵となっているのは、OllabelleのGlenn Pastcheによるオルガンの音色ではないでしょうか。本作の大半でフィーチャーされている彼の暖かいオルガンの音色は、Bucaroの音楽に織り込まれた白と黒のニュアンスを一つの生地とする役割を果たしていると言っても過言ではないのですよ。
ゲストとしてプロデューサーからの人脈でしょうか、Neal Casalが2曲でバックヴォーカル・ギターで参加している他、Anders Osborneも参加、この辺りが好きな人も聴いてみてはどうでしょうか。