人生は悲しいかい?

buppy2008-08-17

Diana Jones 『My Remembrance Of You』

さあ、飲んだくれて終電逃してトボトボ歩いて帰ったり・・・どうなんだろうね、これ。流石に、明日から仕事も再開するので、今日ばかりはアルコールを抜いておかないと。そういう時には、変にアルコールの匂いのする連中の音を聴いちゃいけません、Jason IsbellのブートDVDなんてもってのほかです(笑)。
現在はナッシュヴィルを拠点に活動する女性SSW、Diana Jonesの3rdアルバム。90年代半ばには、テキサス州オースティンを拠点に活動していたようですが(この時期のアルバムは未聴)、祖父の死もあり、同地から引き払う事になったようだ。果たして、彼女がそのままオースティンで活動していれば、どうなっていたかというのは、非常に想像を掻き立てられるところではある。一方で、祖父の死を受けて、自身の記憶の整理をつける意味合いもあった本作のリリース自体が無いとも考えられるので、何事も巡り合せというところか。
本作のプロデュースをJonesと共に担当するのはMark Thayer。Mark Thayerと言えば、Jim Olsenと共にレーベルSignature Soundsを運営する人物(事務方はOlsenで、エンジニアリング関係をThayerが担当しているという、個人的なイメージがある)。Thayer自身、レーベル所属外のミュージシャンの発掘やサポートに積極的で、Signatureの所有するスタジオを使って、レーベル所属外のミュージシャンの作品が録音されるという事も間々ある。本作もそういった作品のひとつという事になる。
参加ミュージシャンは、ギター・マンドリン・マンドラ・ドブロを担当するDuke Levine、ドラム・パーカッションにLorne Entress、ベースにBob Dick、フィドルにJay Ungerという、中々どうして強力な連中が顔を並べる。
クリアなヴォーカルで歌われる収録曲は、何れも魅力的だが、Duke Levineのギターが冴える、失恋を吐露するM2「My Beloved」。かつてPonyと呼ばれた人物の追想と共に、白人によるネイティヴアメリカンの蹂躙を歌うM4「Pony」。Jay Ungerのフィドルをフィーチャーしたタイトルトラック「My Remebrance Of You」での、シンプルに刈り込まれた言葉で、記憶に折り合いをつける過程が描かれていく様は一際印象に残る。
ふと、彼女の歌を聴いていると、映画「Be Here To Love Me」での、Townes Van Zandtの言葉が思いがけず、頭を過ぎった。「ただ現実を歌っているに過ぎない。じゃあ人生は悲しいかい?」と。悲しい雰囲気は漂うが、心の奥をジワリと暖める幸福感が流れている、それが彼女の音楽なのかもしれない。



"Pony"