Caroline Herring

LantanaLantana
Caroline Herring

Signature Sound 2008-03-04
売り上げランキング : 182747

ウェブの先行オーダーの誘惑に、ついつい負けて購入してしまいました。ここ何年かのカントリーフォーク領域の女性SSWとしては、自分の好みのド真ん中にいるCaroline Herringの新作。ミュージシャン業より母親業を優先する為に、前作から5年程の空白期間が空いたが(今はオースティンからアトランタへと移ったらしい)、昨夏Rich Brotherton主導のセッションを行ったというニュースを彼女のオフィシャルサイトで確認してから、この日が来るのを楽しみにしておりましたとも。Rich Brothertonは、必殺のマンドリンこそ手にしていないが、6弦・12弦のアコースティックギター、エレクトリックベース、リゾネーターギター等多岐に渡るサポートを行う。参加メンバーは他に、アップライトベースでGlenn Fukunaga、バンジョーにDanny Barnes、フィドル・ヴィオラにWarren Hood、ペダルスティールにMarty Muse、パーカッションにTom Van Schaik・Paul Pearcyといったところ。
収録曲は総じてレベルが高いが、自分の印象に残ったところを、ちょろちょろと書いてみます。
ゴスペル「When I Ray My Burden Down」を下敷きにしたと思しきM2「Ray My Burden Down」では、彼女の音楽原体験(父親のコレクションにあった、New Port Folk Festival・The Kingston Trio・OdettaのLP辺りがそうらしい)・体の芯にまで染み付いた音楽を一つの曲の中に昇華。これでこそ、待った甲斐があるというものです。
本作のハイライトとなるのは、やはり90年代前半に実際にあったSusan Smith事件を題材にしたM3「Paper Gown」だろうか。親による子殺しのニュースが溢れ返る今、あえてこういった題材を持ってくる感覚は秀逸(この事件に関しては、人種問題から性的虐待に至るまで、複雑なバックグラウンドがあるみたいだけど)。元来備えていた、観測者・語り部的スタンスに、母としての視点が加味された秀逸なフォークソングに仕上がっているのではないかと。無常感を演出するかのような、Danny Barnesによるバンジョーの音色もまた良し。
トラッドM5「Midnight On The Water」では、テキサスフィドルチューンだけに、バックにはWarren Hoodのフィドルが配されている。Brothertonのアコースティックギターに、Herringのヴォーカルが交錯する空間に、ただ聞き入る。
全体的に抑制された穏やかなトーンで展開されていく作品だが、歌・曲・演奏の歯車が噛みあった傑作であると考えるのは自分だけではあるまい。